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2017年2月13日 (月)

論文紹介:ロシアの兵法(Art of War)

■最近はもうひきこもっていたいぐらい寒いですね、みなさん風邪、大丈夫ですか。
今回はFOREIGN AFFAIRSから論文を紹介してコメントを残そうと思う。

Russia's Art of War(ロシアの兵法)を取り上げます。
原文で読める方さっと目を通して頂きたい。なかなか面白い内容です。

■下記、私の訳文になります。(全訳でなく要点だけ訳してます)

『ロシアにおける兵法』

『戦争は他の手段をもって行う政治の延長である』というクラウセヴィッツの格言は、ロシアの拡大する野望的な外交政策を理解する上ではもはや公理となっている。
プーチンはハイブリッドな戦争を好み、戦略的利益のために伝統的な軍事手段と情報操作を上手く組み合わせる傾向がある。

モスクワが最近、実行したグルジア、シリアへの介入がロシアのローカルな利益になるか異論があっても、その目的は国内外にロシアは大国でありグローバルにリーチできると思わせることである。まさに、戦争は他の手段を持って行う国家ブランディングである。

冷戦終結とともに、ロシアは米国やNATOと時に協力し時に競争する仲間として位置づけられた。しかし、2015年のロシア安全保障戦略という公式文書には、主要なグローバル危機においてロシアの役割はロシア連邦からワールドパワーに転換することであると書かれている。
例えば、
第一にグルジア侵攻ではロシアは軍事力を行使し弱めることなく、包括的に勝利するまではロシア軍を撤退させなかった。これにより、ロシア国内、世界に対して近代的な装いを持つ軍事力の行使がより強いことを実証した。

第二にさしたる脅威のないシリア侵攻がある。国内的には意見が二分し、結局はシリア体制へのアシスタントにまわった。しかし、背後からは常に自国の戦略的利益を狙っている。

第三にウクライナへの介入があげられる。情報戦を用いたロシア軍の威信回復プロジェクトは、西洋支配に対して驚くほど効率的、効果的であった。

これら三つの軍事介入は、ロシアはグローバルパワーであるというイメージを焼き付けることに成功し、ロシアを再び大国として出現させるにいたる。

三つのケースからロシアの目的はロシアブランド確立のためであり、ハイブリッドな軍事力と象徴的な意味合いを持つ。

ロシアの新介入主義は西洋思想と深く結びついているがゆえに、ブランド維持のための戦争の主要な要因となっていく。
もし、ロシアの第一の目的が象徴性や情報操作的であれば、より攻撃的に争わなければならないことを示唆している。

■要するにまとめると

ロシアは伝統的な軍事手段と情報戦(情報操作)を組みあわせて、他国に
軍事介入を続けることで、国内外の人々にロシアはグルーバルパワーを持つ大国であると思わせる、セルフブランディングを行っており、そのイメージ維持のために今後もこの傾向が続いていくだろうということでしょう。

■クエスチョン

国家のイメージやブランドは国益にあたるのか、コンストタクティヴィズムならYESだし、リアリズムならNOとなるでしょうか。
難しいのは、そのイメージが決してよくなくブランディングされて結果ロシアは物質的にも経済制裁を受けた。もちろん、ロシアは手ごわい相手だと思わせることには成功したと思うが、それが狙いだったのだろうか。戦略的にミスがあったのではないかと思う。

大国の威信も重要だと思うが、まだまだロシアが経済的に先進国に追いついていないことを考えると軍事大国というラベリングになる。米国もそうなのだが、味方よりも敵を増やしてしまってはグローバルパワーは落ちる。

戦略理論家のルトワックが述べたように、ロシア2.0として他国と摩擦を起こさず、平和に自国の経済発展を優先させた方がよかったのではないだろうか。

いづれ記事にしようと思っていたロシアの地政学者のドゥーギンについては、奥山さんが記事にしてるので、参考にしてほしい。ロシアの地政学 マッキンダーとドューギン

■ロシアが伝統的な軍事手段と情報操作というのはしっくりくるのだけど、そんなにイメージを気にする国ですかね、少し著者の深読みな気がしている。

2017年2月 5日 (日)

マッド・マティス国防長官の来日について雑感

■遂にインフルエンザにかかってしまいました。もう峠を越えたので大丈夫ですよ。今回は日米関係のキーパーソンである、マティス国防長官が来日、日米対談があったので、その雑感を述べておこうと思う。

■トランプ大統領の過去の発言(ツイート)や、マッド・マティスの名前を持つ軍人あがりの国防長官ということで、日本政府、外務省、防衛省はじめ何が飛び出すのやらとドキドキであったに違いない。(マティス国防長官の経歴はwikipediaでも参照してほしい)しかしながら蓋を開けてみると、在日米軍の駐留費の費用UPや、米軍撤退といった非現実的な話はなく、信頼するパートナーの確認をはじめに、辺野古移転やより人と人との協力を求めるといった極めて真っ当な内容であった。

■今回の来日の狙いはなんだろうか。korean Times は次のように分析している。
korean Times

少し引用しておく。

The U.S. will put priority on holding off China in the region by bolstering the trilateral security alliance with South Korea and Japan, although it regards deterring North Korea's military threats as critical as well.



①日・米・韓による中国の封じ込め(尖閣や南シナ海)
②北朝鮮の核・ミサイル問題への対応

特にマティスはイランとの核合意を巡ってオバマ政権では対立し更迭されている。根っからの核非容認派であろう。中国対応もさることながら、緊急性としては北朝鮮の軍事的脅威への対応として、その任を果たすよう、日本、韓国にまず来日したと考えて問題はないだろう。

■日本にとっては利害が一致する。複雑なのは韓国の方で、あらゆる面での対中依存もあり、また事実上の大統領の空白時でもある。今後の韓国の動向を伺うには難しい時期であるが、米国の先制パンチともいえるパフォーマンスとしては成功しているといえる。

■日本とて問題がないわけではない。難航をしめしている、沖縄の基地移転問題でどうやら大きな約束をしてしまったようだ。

琉球新報

こちらも一部引用しておく。

辺野古新基地建設について稲田氏は「一日も早い移設と返還を実現する」と説明。マティス氏は「協力し合い移設先の施設を整備する努力を続ける」と応じた。

 基地負担軽減については、稲田氏が協力を要請した。マティス氏は在日米軍再編を進め、在沖米海兵隊のグアム移転や「沖縄でのフットプリント(存在)縮小」に協力する姿勢を示したが「能力は維持する」と指摘した。


米軍は機能をそのまま維持。沖縄は辺野古に移転といった内容である。
ただし、沖縄の方の心情を考えるにこれで良いのか、発言が早計かつ性急ではないかと思う。

■マッド・マティスやトランプ大統領の過去発言に外交交渉前から負けてしまった感がぬぐえない。
マティス国防長官は軍人あがりとはいえ真面目で読書家でスマートな人物である。核兵器に対しては強硬な姿勢で臨むだろうが、さほど戦争や紛争を好むタイプとは思えない。かつてのコリン・パウエル氏のようにである。

安全保障に関しては、マイケル・フリン補佐官とマティス国防長官を交渉窓口にして進めるのが懸命だろう。
恐らくトランプ大統領ではまとまる話もまとまらないというリスクが大きすぎる。
両国の事情を理解し東アジアの安全保障環境を把握できる人物を探していくことが、日本の対米外交にとって、もっとも難しいが、もっとも大事な仕事になるだろう。



«トランプ新大統領の誕生とマイケル・フリン氏について(総論)

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